野崎 まどのknowを読んだ。
2013年に発売とのことで、4年前の本です。
内容紹介を引用すると...
超情報化対策として、人造の脳葉〈電子葉〉の移植が義務化された2081年の日本・京都。SFモノ。
情報庁で働く官僚の御野・連レルは、
情報素子のコードのなかに恩師であり現在は行方不明の研究者、
道終・常イチが残した暗号を発見する。
その“啓示"に誘われた先で待っていたのは、ひとりの少女だった。
道終の真意もわからぬまま、御野は「すべてを知る」ため彼女と行動をともにする。
それは、世界が変わる4日間の始まりだった――
時代背景が興味深かったので、ご紹介。
建物などの人工物には「情報素子」が組み込まれた「情報材」が使用され、モニタリングした周囲の情報が蓄積されていく。
そうして発生した幾何級数的に増加する有意、無意を問わない莫大な情報は、人類の脳で扱うのは限界になり、情報過多による病が蔓延。
世の中にあふれる情報量が増えていくのはその通りと思う。
だが、情報が多すぎるために人々が情報圧迫症みたいな病気に...はならない気がする。
人間の脳は賢いので、多すぎる情報はCUTするし、サボろうともする。
どちらかというと、検索すれば分かるから と、記憶や想像をしなくなり、脳を使わない病が蔓延しそうだ。
そこで、脳に直結した「電子葉」というデバイスを体内に組み込むことが義務化されることになる。
電子葉は、情報が必要になるとネットワーク経由で取得し選別された結果を、目の前に表示する。情報の取得だけでなく、個人情報を含む提供も強制的に行われる。
つまり、現在のように”個人情報は送信しない”という選択肢はなく、全て送信される。
私は個人情報も渡して便利な生活を送りたい派なので、そんな未来だったら素敵と思う。
ただし、安心できるシステム、管理先である前提。
knowでは、一人の天才がこのシステムを構築したという設定。
その教え子が、14年間そのコードを眺め続けた結果、バグはなく、ほんの数個だけ「こんな書き方、らしくないけど?」 というものが見つかったレベルで、しかもそれはわざと仕込まれた暗号だったという 凄さ。
なんとも羨ましい。そんな天才が現実にいて欲しいものだ。
取得可能な情報量、個人情報の保護量は、「階級」によって決まる。
レベルは0〜6まであり、通常はレベル2で、社会貢献度などにより上がっていく。
生活保護を受けている(税金を払っていない)人はレベル0 で、ほとんどの情報が得られないし、守られない。
レベル5以上は政府関係者のみに与えられる特権階級。
現在の日本で階級があるとすれば、どれだけお金をもっているか? だと思うが、それとは別に、情報の取得・保護量に差があるというのも面白い。
今の価値観では現実的ではないが、結構、今よりよい世界になるのかも?とも思ってしまう。
しかし、実はシステムを構築した天才は、「オープンソース」が理想像。
つまり全ての人がレベル0。全ての情報が開示され、取得できる社会。
安心・安全と便利 は、多くの場合、反対のベクトルを向いている。
「よいバランスで」 という結論となる話だが、思わず自分はどんな未来がイイと思うのだろう?と考えてしまった。
個人情報は保護されるべき という先入観を持ってしまっているが、
実名が必要なFacebookを使っているのはなぜ?
名刺って、強制的に個人情報をばら撒けと会社が指示をしてるようなもの? 代償に給料をもらっているから許せるの?
...とか。
SF作家さんは、現時点で垣間見える未来像を元に、想像する未来を、物語として文章にできるほど具体的にイメージしていくのが凄い。
だがら読み手は、たしかにそうなりそう!とか、これは違うと思う!とか、こうなって欲しい・欲しくない!とか思える。
knowの本筋のストーリーは、好き嫌いが分かれそうな感じ。
多分、これからはIoTだ!と叫ばれている時代に書かれたんだろうと思いますが、機械学習だ!と叫ばれている今、書かかれたらまた違うストーリーになったのかも?